退職して13年。古巣が教えてくれた5つのこと(一宮西病院 再訪記)vol.1「理念は届けなければ意味がない」

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先日、13年前に退職した古巣・一宮西病院(愛知県一宮市)を訪れました。

社会医療法人杏嶺会。現在は801床を擁する尾張西部医療圏の中核病院です。
私が在籍していた2005年〜2013年の8年間で、常勤医師を20名から80名に増やしました。
その後を引き継いだ後任が、さらに230名にまで拡大しています。

今回、ある約束を果たすために理事長を訪ねました。
その面談で、理事長が発した一言が、私の頭から離れません。

「売れるようにやりな。」

短い言葉でした。
しかし、これほど本質をついた言葉はないと思いました。

実は理事長は、私の報告の内容には一切口を出しませんでした。
「いいよ。自分がやりたいようにやりな」と全面的に任せてくれた上で、最後にこの一言を加えたのです。

つまり、こういうことです。

「中身は信頼している。だからこそ、それを届ける努力を怠るな」

これは、医師採用にそのまま当てはまる

私はコンサルタントとして全国の病院を支援していますが、「良い病院なのに医師が来ない」というケースを数多く見てきました。

共通しているのは、理念や強みはあるのに、それを医師に届ける仕組みがないということです。

例えば、こんな病院があります。

  • 地域密着で患者さんからの信頼は厚い。しかしホームページの採用ページは5年前のまま
  • 院長の想いは熱い。しかし面接で伝えているのは「給与」と「当直回数」だけ
  • 紹介会社に年間2,000万円以上払っている。しかし自院の魅力を言語化したことがない

どれも「中身」は悪くないのです。
ただ、届け方が圧倒的に足りない。

良い病院であることと、医師に選ばれることは、別の話

この理事長は20年以上前から、病院を「地域に必要とされる存在」にするために全力を注いできました。

しかし驚くべきことに、理事長は自分の病院が業界で有名になっていることすら知りませんでした。

「俺はそういうことに興味がない。地域の患者さんに良かったら、それでいいじゃないの」

この言葉を聞いた時、私は確信しました。

本物の理念を持っている経営者は、ブランディングを「狙って」いない。
理念に忠実に経営した結果として、自然と医師が集まる病院になっている。

しかし、それでも理事長は「売れるようにやりな」と言った。

矛盾しているように聞こえるかもしれません。
しかしこれは矛盾ではありません。

「理念」と「伝え方」は、車の両輪だということです。

「伝え方」を持たない病院は、存在しないのと同じ

厳しい言い方をします。

あなたの病院がどれだけ素晴らしい理念を持っていても、それが医師に届いていなければ、医師の転職市場では「存在しない病院」と同じです。

人材紹介会社は、あなたの病院の理念を医師に語りません。
紹介会社が伝えるのは「年収」「当直回数」「アクセス」「症例数」だけです。

では、誰があなたの病院の理念を医師に届けるのか?

あなた自身です。

それを仕組みとして構築するのが、私が提唱する「自力採用」の考え方です。

まとめ:理念を持つだけでは足りない。届ける覚悟を持て。

退職して13年。
古巣の理事長が教えてくれた最初の教訓は、シンプルでした。

「売れるようにやりな。」

この言葉の裏にあるのは、
「中身が良いのは当たり前。それをどう届けるかが勝負だ」
という経営者としての哲学です。

あなたの病院の理念は、今、医師に届いていますか?

次回予告

退職して13年。古巣が教えてくれた5つのこと(一宮西病院 再訪記)
vol.2「地域に良かったらそれでいい」── ブランドは「狙う」ものではない

全国から見学者が殺到する病院の理事長が、自分の病院が有名であることすら知らなかった──。
次回は「本物のブランド」とは何かについてお話しします。

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